打ち合わせや会話で「頭の回転が速い人」と一緒にいると、不思議と元気をもらえることもあれば、逆にどっと疲れてしまうこともあります。
本を読んだりSNSを眺めたりしても同じで、「エネルギーが湧いてくる」と感じる場合と、「なぜか気が重くなる」と感じる場合があります。
その背景には、性格の違いや相性、内向型・外向型といった要素もありますが、一つの大きな要因として「思考スタイルの違い」が関わっていることがあります。
2つのスタイルに注目してみる
思考スタイルにはいくつも分類方法がありますが、ここではわかりやすく「ロジカル創造型」と「デザイン思考型」という二つの傾向に注目してみます。
- ロジカル創造型:枠組みやフレームを使い、とにかく数を出す
- デザイン思考型:人や背景を深く理解してから考える
前者はアイデアを「数」と「プロセス」で広げやすく、後者は「意味」と「共感」を重視するのが特徴です。この違いを知っておくと、なぜある人とは会話がスムーズで、別の人とは疲れてしまうのかが少し見えてきます。
ロジカル創造の特徴
「ロジカルに枠組みを使って発想する人」は、アイデア出しにおいてスピードと数を重視します。カードやマトリクス、チェックリストなど、用意されたフレームワークに従ってどんどん出すのが得意です。
強み
- 手順が明確なので、誰でも参加しやすい
- アイデアの数を一気に広げられる
- 論理的に説明・納得させやすい
弱み
- 背景や人の気持ちを深く掘り下げるのは苦手
- 「数を出すこと」が目的化すると、使えないアイデアが増える
デザイン思考の特徴
一方で「人や背景を深く理解してから考える人」は、まず共感と意味を大切にします。「誰のために?」「本当に必要なのは?」という問いを探りながら、アイデアを考えていきます。
強み
- 人に寄り添った、本質的な課題を見つけられる
- 実際に役立つ・使えるアイデアにつながりやすい
- 共感や観察を通じて、見えにくいニーズを発掘できる
弱み
- 背景が見えないまま唐突に数を出すのは苦手
- 「意味」を探りすぎて、スピード感が落ちることもある
なぜ疲れやすさにつながるのか
この二つのスタイルは優劣ではなく、得意なことが異なるだけです。ただし、場面によっては噛み合わず、疲れにつながります。
- ロジカル創造型の人からすると → 「迷わず出せばいいのに、なぜ止まるんだろう?」
- デザイン思考型の人からすると → 「背景を無視して数ばかり出すなんて、意味があるの?」
互いに「自分のやり方こそ正しい」と思いやすいため、摩擦や消耗が起きやすいのです。
スタイルを行き来することはできる
この二つは固定的なものではありません。実際には多くの人が、状況に応じて両方のスタイルを使い分けています。
デザイン思考寄りの人がロジカル創造を借りるとき
- 背景を軽く押さえてから数出しに入る
- 時間や数のルールを決めて強制的にアイデアを量産する
- ツールやAIを“数出し担当”に任せて、自分は意味づけに集中する
ロジカル創造寄りの人がデザイン思考を借りるとき
- アイデアを出す前に「誰のために?」を一問だけ考える
- 出したアイデアの中から、人に響くものを選ぶ
- 観察や対話を少しだけ取り入れてみる
両者は補完関係になれる
ロジカル創造とデザイン思考は、正反対のようでいて相性のよい組み合わせです。
- デザイン思考で「何を解くべきか」を見極める
- ロジカル創造で「どう解決できるか」を広げる
この流れを組み合わせると、的外れにならず、かつ多様な選択肢が得られます。
また、スタイルはこの二つだけではありません。直感でひらめく「感性型」、じっくり時間をかける「熟成型」、会話の中で膨らませる「協働型」など、多様な傾向があります。
AI時代と人間らしさ
さらに近年は生成AIの進化により、「ロジカルにアイデアを広げる」作業はAIが得意とする領域になってきました。一方で、アイデアを「人にとって意味のあるものにする」ことは人間にしかできません。
背景を観察し、感情を汲み取り、文化や倫理と結びつけること。これはまさに「人間らしさ」の領域です。AIと人間がそれぞれの得意を活かし合うこと。そこにこれからの創造の未来があるのかもしれません。
自分のスタイルを知ることが強みになる
「唐突なアイデア出しが苦手」と感じるのは、劣っているからではありません。それは、背景や人の気持ちを大切にするスタイルを持っている証拠です。
逆に、数をどんどん出せる人は、フレームワークや仕組みを活かすのが得意なスタイルです。
大切なのは、自分がどちら寄りなのかを知っておくこと。そうすれば「なぜ疲れるのか」「なぜ合う人と合わない人がいるのか」が見えてきます。そして、必要に応じてスタイルを行き来することで、創造はもっと豊かになります。